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愛着。
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昨日のこと。
NPO川越きもの散歩の方々が工房にお越しくださいまして。
『NPO川越きもの散歩』のみなさんは、きものを身近な暮らしに取り戻し、次代につなげたい。
埼玉の養蚕農家を見学し、埼玉産の繭を購入、本庄や桐生の織元に依頼する
「顔の見えるきもの作り」を進めています。きものでまちづくり、繭の地産地消、伝統工芸ツアー
なども開催し、活動をされておられる方々です。
今回は埼玉の繭から作られた『いろどり』という生糸をわけていただき・・・iwasakiらしいものを
作らせてもらおう・・・というコトになりました。

昨日も大変暑い中・・・。大変不便な私たちの工房までおいでいただきまして。
私(エツコ)の『規格を変えた、一年中単衣仕様で浴衣のようにお風呂場で洗ってしまう・・・紬』
にたいへーん興味を持っていただきまして。私物のキモノで何度も洗って『とろん』となった(笑)
春夏秋冬の、ユーズド品を触っていただきました。
昨日は、奥のベージュの生紬を着ていたのですが・・・汗をたっぷりかいてしまいまして。
今日洗ってさっぱりさせようと思ったところ・・・。手前のグレーの生紬の袖口にシミが出来ている
コトを発見(トホホ・・・)気をつけてはいても、寒い時期なら割烹着を上から着るけど、夏場は
お勝手仕事などでつい・・・知らぬ間に汚していたりするのも、暮らしのなかのキモノならでは。
そうはいっても、織るのに大変時間のかかるものなので、自分用に下ろすのはホントは勇気が要って。
それを丁寧に仕立てていただいたモノに、シミなんて!・・・と、以前だったら相当ショックでしたが。
眼から鱗といいますか、
以前とある温泉旅館の女将さんに、iwasakiの紬や帯を買っていただいたことがありまして。
そのお方は、創業当初から作家モノの織りのキモノばかりを『夢のある仕事着』としてフツーにばんばん
お召しになって・・・。織のキモノなので(そうは見えなくても)大変高価なモノであっても天ぷらだって
揚げちゃう・・・カッコイイお方。私たちにリクエストも、「淡いお色目の格子とか・・・」とだけ。
「私ね、着るから汚れるでしょ、少しずつ上から染めに出しちゃうの。何十年もそういうサイクルで着る
から今は濃い色目の無地の紬ばかりになってしまってね。せっかくだからスタートは、淡いキレイなお色
から・・・と思ってね。」
ちょうど私たちの母親世代の女将さん。
女将さんの濃い色の紬には、女将さんのこれまでの歴史が刻まれているのだと思いました。
後染めをしても、縞や格子はぼんやりと感じるから・・・それは最初からはゼッタイに出来ない奥行きの
ある無地となるのです。
それは、一生懸命日々を生きた証しのようで、すっかり女将さんに憧れてしまいまして。

私も気がつけば・・・折り返し地点はとっくに過ぎたお年頃。
これからの人生は、手を入れながら・・・シミも皺も自分自身とともに愛着を持って大切にしていこうと。

昨日、川越きもの散歩のみなさんにもお話したのですが。
織のモノの褒め言葉に、『風合いがイイ』という言葉がありますが、iwasaki的には最初に『風合いがイイ』
のはNGだと思って制作しています。
『風合い』は、永く着てゆくうちに出来てゆくもの。言ってみれば、ユーザーが育ててゆくものだと・・・。
ユーズド加工のジーンズは、きっと元々のデニムの品質の良さがあってこそのように。
なんてコトないiwasakiの紬や帯たちが、顔の見える繭から出来る糸を使って・・・
どなたかの、なんてコトのない愛おしい日常を重ねて、『愛着の湧く愛着』になっていってくれるコトを願って。
by senshoku-iwasaki | 2013-08-20 22:34 | 骨子・背景
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