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森くみ子さんとのプロジェクト・報告8
森さんは、ご自身の作品のなかで・・・木綿や麻の藍染め着尺を制作されています。
驚くことにそれらの作品は、ほとんど襦袢や帯に色移りしないというのです。

『藍染め』と呼ばれるものの中には、インド藍や、琉球藍のように還元建てして染めるもの。
すくもから天然灰汁と石灰、ふすまで地獄建てで染めるもの。苛性ソーダやハイドロといった
薬品を使うもの。合成藍で染めたもの・・・。
森さんも私も。
どれがホンモノで、どれがニセモノとか。だれが正直で、だれが嘘つきだとかとか。。。
そんなコトには、そもそも全くキョーミが無いのです(笑)。

江戸時代に確立された、阿波藍の極上のすくもから江戸時代と同じ方法でシンプルに藍を建て
染める森さん。藍液の微生物の栄養となるのは、ふすまだけ。森さんはお酒も入れません。
「お酒を入れると、還元してしまうんです。
私は、その還元が色移りの要因のひとつに思えるのです。」森さん。
たしかに、私が以前作っていた沈殿藍も還元染めでしたが。
色止め剤を使っても、色移りがとまらない・・・それで自家製藍を諦めた口ですので(笑)。
麻や木綿と違って・・・動物性繊維の絹糸は、そもそも藍液のアルカリで糸が痛むのではないかとか。
と繊維の周りに藍が付着するだけで、浸透しないのではないか・・・等々疑問がありまして。

藍の成分だけではなく、歴史の研究もされている森さんから
「絹糸のセリシンを残した生紬なら、糸を痛めることもないのでは?古い織物にも精練されていない
絹糸を藍で染められているものがあります・・・」のお話しになるほど!

今回はまず森さんと、私(エツコ)の実験台!?プロトタイプです。
あえて色移りが一番しそうな(!?)濃い藍色で。
プロジェクトと言っているのは、早期の商品化を前提としているから。
iwasakiが商品として・・・この森さんが手掛けた、美しい藍の色バリエを楽しめる手織物を作るなら
時間のかかる織物とはいえ、作りやすいものでなければいけません。。。
段取りと下拵えとシュミレーション、工房の機と、仕事のローテーション。今まで(子供の急な病気とか、
予期せぬ事態も踏まえて・・・)予定プラス10日という、余裕をもって計画してきましたが。
今年に入ってから・・・余裕時間、休日無しでキッチリ予定日上げでなんとか・・・。の日々(汗)。

今、このプロトタイプを織っております!
今度の日曜日に・・・東京で森さんと、この反物を持って打ち合わせをするべく・・・・。尻カッチリで(笑)。
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報告8
『微妙な薄い色を染めるには藍液の濃度の具合が適さず、保留にしていました縹色のバリエーションを
染める順番になりました。
藍建てしてから3ヶ月が過ぎ、濃い色は染まらなくなり、折り絞りや込み入った絞りの襞の中の藍液は
酸化しにくい状態になりました。
この間藍瓶には麸を2回、石灰を7〜15日毎に、1〜2番灰汁(PH14前後)が藍液の減り具合に
合わせて投入されています。
藍の色を上手く布、糸に染め付かせるのは、藍液の状態に合わせて素材(絞の種類、布の厚さや
密度、糸の細さや撚りの強さ、繊維の種類など)を的確に判断して染めることが必須です。
藍液は日々変化しますので、特に絹や細糸の布は変化した色が如実に表れます。
欲しい色を染めるためにも藍の管理に気を使います。
藍分(インジゴ)の含有量も染める毎に減っていきます。以前数人で工房を運営し染めていた時は、
だいたい3〜4ヶ月で藍分が無くなり廃棄していました。
今は1人ですので毎日の使用量も少なく、藍菌の負担も少ないからでしょうか、最終的には2年ほど
藍液の中に藍分が残っています。
そのころには何度染めても「瓶覗」といわれるごく薄い青色しか染まらなくなります。


絹糸にとっては石灰も多く入りよい環境ではないのですが、薄い色を染めるには1回藍液に浸しても
それ程濃くならず、2回と3回染めたものの色の違いも左程ではありません。
瓶覗、水色、浅縹、浅葱色などを染めます。
染まる力も弱いので液の中にゆっくり浸して、糸を硬く絞りよく酸化させます。


「60中x3玉糸」は水色、花浅葱「42中x5玉糸」は縹、瑠璃色「110中x2玉糸」は水色、浅縹、瑠璃色
に染めました。
前回と同じ糸の同じ色名もありますが、微妙に違う色に染まっていると思います。染まった色に合わせて
13段階の色名で都合上識別していますが、毎年、毎回、同じ色に染まらないのが藍染です。
良さでもあり短所でもありますが、色名で注文をいただいても同じ色に染めるのは大変難しいです。
商業ベースでは欠陥技術の扱いになりますね。
染織iwasakiさんとのお仕事は、欠点でもある揺らぎのある藍糸が個性的な織物になると楽しみにしています。』 
2月1日

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by senshoku-iwasaki | 2016-06-21 22:46 | いわさきのつながり
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