森さんの藍甕には、蒅(すくも)と灰汁と麸(ふすま)と石灰だけ。 阿波藍の特別さは、その蒅(すくも)の製法にあります。 蒅(すくも)とは。 藍の葉を乾燥させ、水分をあたえて発酵させたものです。 蒅(すくも)は藍師と呼ばれる長年の経験と、技術を持った人たちによって作られ ておりまして。 葉藍を約100日かけて、藍成分インジゴと糖質やたんぱく質を栄養源とし繊維発酵させる ことで、多量の有機物と藍還元菌などが含まれた物質に変えたのが蒅(すくも)です。 この繊維発酵が秀逸なので、阿波の地以外で作られた、地藍と呼ばれる蒅(すくも) とは桁違いなのです。成分的に。それは価格にものすごく反映されていたようです。 その蒅(すくも)に森さんは、木灰汁のアルカリの力で還元(発酵)させて。 黄色い水溶性の物質白藍(インジゴホワイト)に変えて染液にするのですが、 それを、『建てる』と呼びます。 私(エツコ)は、化学も苦手(そもそも得意なものがあるのかどうかも・・・?・涙) 亀の子の化学式は、チンプンカンプンなのですが、なんといってもこの化学反応を、 江戸時代の人がちゃーんと、知恵と経験と工夫で、諸外国の影響を全く受けず 独自の技法で極めていた、というのが阿波藍の歴史。スゴイです。 森さんも。江戸時代の技法のまま、とってもシンプルに藍を建てます。 現代の暮らしのなかで、木灰をたくさん集めることは一番大変です。 アルカリを高めるだけなら、薬品を使う方法もいくらでもありますが。 森さんは、染め切ったあとの廃棄についても、土に還る好アルカリの発酵の 『土壌改良剤』になる藍染めをされている方なのです。 さてさて。今回写真がナカナカ難しかったのですが・・・。これは『紺』。 前回の『褐色(かちいろ)』の次に濃い、贅沢なお色。 なんでかというと、染液である発酵状態が上り状態にある(藍の勢いが強い)とき に数回で染め上げる、何度も何度も染め重ねて濃くするわけでは無いというのが 『褐色』や、『紺』なのだそうで。 徳川家に代々愛された高貴なお色・・・というのも頷けます。 報告1 『いい感じに藍建てが完了しました。 今日初めて染めてみましたが、大丈夫です。 これからまず手持ちの糸を染めてみて、 今週中には岩崎さんからのお預かりの糸を染め始めます。 よい色に染まるとよいのですが‥‥とても楽しみです。(ちょっとドキドキですが‥) 始めの段階は醗酵の状態が安定しません。 染め始めの3週間くらいが染液の浸透に勢いがあって濃い色が染められます。 今回、中石といわれる蒅(すくも)の醗酵初期の段階(わたしは発芽するときと思っています) をゆっくり、できるだけ全ての菌が発芽するように待ちました。 (藍瓶の中の藍菌の様子は見えませんし、わたしの勝手なイメージです) わたしの藍建てはここが一番大切な時間で、 いつもここだけは慎重に蒅の状態を確認しながら適応します。 ここが上手くいくと後はいくらでも取り返しができるのですが、 失敗するといつまでも多くの麸を投入しないといけません。 (異物はできるだけ少ない方がよいです。建ち上がって直ぐ麸をいれないと 醗酵の勢いが頂点に達しないままズルズルしていまうこともあります) 今回も藍菌がよい醗酵をしてくれました。 15年前の蒅にも藍菌はきちんと生きていて培養に適した環境が 与えられると、発芽、増殖します。 わたしはこの菌を増殖させて、水に溶けない藍の染料「蒅」を 菌の力で還元させ布に染まる状態にします。 菌の活きよいがある(若い!)ときにしか染まらないものを最優先に染めます。 絹の場合あまり濃い事は重要でないのですが、勢いは欲しいのです。 絹の糸染めの経験は少なく初心者と同じです。 色が落着いたもう少し後(2週間後くらい)で染めてもよいのですが、 セリシンの残っている絹をおよそ2Kgも染めた経験はなく、 藍の管理も含め今回手探りでよい方向へ持っていこうと考えています。 上手くいくかは未定です。』 11月10日 報告2 『今日、手持ちの(以前サンプルを送った糸)4綛染めてみました。 水(水道水)と灰汁(PH10位)に一晩浸けたものをテストしましたが、 殆ど変わりません。 セリシンの具合の仔細はまだわかりませんが、 岩崎さんの糸は水に浸けただけで染めてみようと思います。 藍の濃度が濃いので手早くやらないと、絹はすぐ表面だけ染まります。 この環境で染めるのと、もう少し濃度が低くなってから染める方がよいのかは 少しずつ経験を積まないと結果はでません。 今回は初めてなので取り敢えず今しかできない一番濃い状態で 染め上げます。』 11月11日 報告0はこちらです。
by senshoku-iwasaki
| 2016-01-04 22:09
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