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前回宮坂製糸さんを訪れた際に、とても気になる糸がありまして。
それは玉繭から横挽きで座繰りにとった、玉糸。それもズル節と呼ばれる長い節がかなり有り。 何年か前のストックで、当時いらしたスタッフのある方が挽くと・・・なぜか特に節が出たのだと。 素材的に高価であることと、今現在の技法ではこうした節にならないということで。 宮坂さんでは敬意も込めて『御柱糸』と呼び、丁寧に保存されていまして。 どうしても。 その糸を使って、新シリーズを作りたく・・・。 おぉぉ。そうだった。これまでに何度か宮坂さんを訪れていたものの。 ご近所にはあの、諏訪大社が。なのに、ホンモノの御柱もiwasaki夫婦は見たことが無かった・・・。 これは新シリーズに取り掛かる前に、神様にご報告をしなければ!と。 ![]() 諏訪大社の創建は古く、古事記の国譲りの神話にまでさかのぼる・・・日本最古の神社のひとつ。 本殿は持たず、この上社は神体山(守屋山)、下社は御神木(春宮は杉・秋宮はイチイ)をご神体 とする古い形態を残しているそうで。この上社前宮の御柱は、こういった場所に4か所。 どの社の周りにも、こうして川が流れていて。神聖な空気です。 たしかに水と風を司り、信濃国を開拓された神様・・・パワーを感じますっ!! ![]() こちらは下社秋宮。大きな注連縄の神楽殿です。 今回上社前宮、上社本宮、下社秋宮、下社春宮と4社全てに参拝できまして。 これからのチャレンジを、どうか見守ってください・・・とお願いを。 ![]() そして・・・。こちらが宮坂製糸さんのお蔵。 この中の特別な糸を、iwasaki、これまでに作ってこなかった・・・かなり太糸に撚糸してもらって。 素朴で贅沢な、『特別な』太織りを作りたく。。。 糸が高価であるし、果たして良いモノになるのかどうか・・・とか、売れなければ作るコトが出来なく なるし・・・とか。ずっと作りたいと思っていたのだけれど、ずっと踏み出せなかった、かなり勇気を 振り絞ってのチャレンジです。 森さんとのコラボもそうですが、iwasaki結成25年を迎える2017年に向けて・・・。 iwasakiのこれから・・・の礎(柱!?)になるような新シリーズにしたいと思っております!! ▲
by senshoku-iwasaki
| 2016-09-28 22:37
| 骨子・背景
絞り絣八寸帯地のシリーズは、iwasakiの織物のなかでもチョット特殊。
なんといっても。 一度仮織りをしてから・・・絞り染めの要領で布を後染めすることで作る絣。 ![]() 糸を括って作る絣との違いは、この絞り足・・・。 もやーんと、ぼわーんと。 織物は特に、キッチリと計算しないと作れないのですが。 そこに後染めの要素が加わることで、ジャズのような即興性が生まれます。 ざっくりとした八寸なので、繊細な絞りは向きません。 いやいや、こればっかりは繊細じゃダメなのです。 大胆で、健康的で、のびやかで、生きている歓びを絞りたいのです。 アンデスの、ナスカ/ワリ文化・6世紀から11世紀のものといわれる染織品。 えっ!?1000年前の人々も。 獣毛を梳いて撚りをかけて・・・糸にして。小さな織物を作り、それをはぎ合せ・・・。 絞って染めた鮮やかな布。 ![]() iwasakiの絞り絣は、これをリスペクト。 ワリの人々は、死者を葬るときに・・・あの世で着るものに困らないように? 生まれ変わっても織物が出来るように?死者にこのような鮮やかな布を纏わせて。 死者の脇には・・・織り糸や、機織り機まで出土しているというから。 もしも文字を持っていたならば、インカ文明の前に栄えていたという、ワリの人々の 謎がもっと解明されていた・・・ということらしいのだけど。 ムズカシイことはワカラナイ、おバカな私(エツコ)にとっては。 この布が、紀元前でも10世紀でも中世でも、仮に最近のモノだったとしてもでも。 そんなことは実はどうだって構わなかったりします(笑)。 だってこの織物に、文字よりも言葉よりもココロに響く、チカラを感じてしまったのだから。 そんなパワー溢れる織物に、iwasaki心の底から憧れて・・・。そんな織物を目指して!! ▲
by senshoku-iwasaki
| 2016-09-26 22:16
| 着尺・帯
![]() タテ糸に、着尺や九寸帯地で使った・・・残りの絹糸を取り混ぜながら経てまして。 今回のタテ糸は、植物染料で染めた糸が多いので。淡く、渋く、控えめに光っております。 ヨコ糸には肌触りのいい、細番手のエキストラファインウールと絹を・・・と考えていまして。 プロダクトでたくさん生産されるものと違って、わざわざ少しずつ手織りするマフラーですから。 色だけじゃない、素材だけじゃない、『手』じゃないと出来ない規格になっております。 それは、着尺や帯のときも同じ。 『高級』なんじゃなくて、『マニアック』な織物を作りたいと。 今週は。 日曜の朝から大ピンチ! 糸染めに使っている、山の水が出ないっ!連日の台風で、水源で何かあったみたい(涙)。 集落の男衆で水源地まで行かなきゃ、というコトになっているのですが・・・連日大雨。 我が家の住まいのほうでは、なんと雨漏り!(工房じゃなくてヨカッタ~) 屋根のどこかを伝って・・・雨水が入り込んだようで。。。 雨の止んだ合間を縫って、すぐさま板金屋さんが来てくれて助かりました。 今日の雨では漏ってこなかったから、きっと直ったのかも。 山の水は、土曜日でも雨が上がってたら・・・見に行こうということに。 山ヒルがまだまだいっぱいいるなぁ・・・と。隣人とどんよりのクニヒサ。 この雨で。 糸染めの仕事も溜まっておりまして。はやく復旧するといいんだけどなぁ。。。 そういえば我が家のカメも。 ちょっぴり元気が無いように見えるのは、水道水のせい?急に肌寒くなったからだけかなぁ(笑)。 ▲
by senshoku-iwasaki
| 2016-09-22 22:02
| 工程
今年は、4種の絞り絣。
この斜めの段は、山形斜文で・・・色違いで2種。 ![]() ヨコに焦げ茶を入れたタイプは、地色の部分の菱がよく見えます。 ![]() ヨコにピスタチオグリーンを入れたほうは、絣の焦げ茶のあたりでよく見えますが・・・。 こちらのほうが、経縞のブルーが効果的に出ているようにも感じます。 糸を絣にして括るのと違って、一度布にしてから絞って作る絣なので・・・先染めならではの ストライプにして、織物らしさを控えめに(!?)強調しているのですが。この縞が、絞るときに 目安の一つにもなり、また色が乗ることで独特の深みも出してくれます。 この絞り絣、とにかくヒトの手を感じるモノにしたいのです。 工藝の捉え方として・・・幾度となく繰り返される工程の中で、その都度手の跡を消し去ることで およそ手づくりとは思えないほどの・・・緻密で精巧で完成度の高い造形を目指すのもひとつ。 美術工藝といわれるジャンルは、こちらが近いのかもしれません。。。 iwasakiが目指すのは、用途があって美も成り立つ民藝の方向なので。 私(エツコ)の大好きな最中でいうなら(!?)『愛おしくて絶品』を目指したいのです。 チョット不細工かもしれないけれど、なんともクセになる愛おしさに加えて・・・絶品の仕事を感じる そんな織物にしたくって・・・。 440シリーズの絣は、九寸帯地で制作しておりますが。 絞り絣はざっくりと八寸で。とびっきりのフツーの日を彩る帯になりますように! ▲
by senshoku-iwasaki
| 2016-09-19 21:47
| 着尺・帯
染織こうげい・神戸店さんでの展覧会まで・・・いよいよ1ヶ月を切りまして。
こうげいさんに向けて、昨年から制作している『絞り絣』のシリーズの最大のテーマは『THE HANDS』。 ヒトの作り出す、曖昧で不確かで不均一・・・なんだけど、明確で確信的に帳尻を合わせるコトが出来る のも高等動物の、ヒトならではの造作で。 ペルーのナスカ/ワリ文化(紀元前~800年/700~1000年)の染織品に、すでに赤やグリーンに染めた 四方が耳の小さな織物を、絞りで柄を作ったものがありまして。 15年ほど前に、古民具・坂田さんで求めた・・・埋葬用のその布の一部に、いつもパワーを頂いて。 純粋に。 1500年以上も経過して、小さな島の日本の山の中で・・・同じくらいパワーのある織物をつくりたい!と。 そして今年も。4種の絞り絣がうまれました。 ![]() 一度木綿糸でさっくりと織ってから、絞り染めをしまして。 それも絣の要領で、まずは一番薄い色になる山吹色から染めまして・・・緑にこげ茶。 この色は、絹に染まる酸性染料なので、ヨコ糸の木綿は染まっていません。 染め上げてから・・・再び機(はた)にセット。ここからクニヒサにバトンタッチ。 ![]() クニヒサ、眼鏡を外して(笑)・・・慎重にタテ糸を切ることのないように耳で木綿糸を切りまして・・・。 ヨコ糸を抜いていきます。この姿、なんか・・・お爺ちゃんですねぇ・・・(笑)。 そして・・・。 クニヒサ、いつものタテ糸の綜絖(そうこう)通し、筬(おさ)通しを経て踏み木にセットしまして・・・。 やっと。杼(シャトル)に絹糸を入れまして、本織りに入ります! ▲
by senshoku-iwasaki
| 2016-09-17 21:34
| 着尺・帯
![]() 昭和のモーター唸る『ぜんまい』稼働。 次に織る、綾織り着尺のタテ糸になる生糸を、木枠に上げる作業です。 普段は手動で1カセずつグルグル巻いて、アタマで回転数をカウントしているのですが。 整経長の長い織物で、節のないタテ糸を使うときに使っています。 一気に5カセ木枠に上げるコトができるから、すんなりといけば・・・ちょいと腰かけることも可能。 ・・・なハズなのですが、そうは問屋は卸さない(笑)。 結構つきっきりで。でもやっぱり早い、文明の利器(チョット古いけど・笑)。 週末は娘の用事だったり、息子の学校行事だったりで・・・糸に糊付けが出来なかったのが クニヒサの心残りだったのですが。今日雨の予報がうまくハズレて、曇り時々の晴れ間!! 風がほどよくありまして、イイ感じに乾いたところから糸巻き。さすが洗濯大臣! iwasaki手分けをして・・・まるで秋の大運動会。 私(エツコ)も乳灰色の杉綾織り着尺を織りあげまして、すぐさま・・・クニヒサが2本織った後の、 もう1本のモノトーンの八寸帯地にかかっております。 クニヒサは、最新作の絞り絣の八寸帯地が・・・明日にでも織り上がる感じですが。 いやいや、明日は。 これを整経してもらいましょう。 金曜日には・・・。 私はまた杉綾織の着尺に。・・・ということは、それまでに帯地は織りあげて・・・。 ご注文いただいている、杉綾織着尺はまだありまして。 目薬点して、老眼鏡かけて、ブルーベリーもいっぱい食べて(笑)。 お目目鍛えてガンバリマス! ▲
by senshoku-iwasaki
| 2016-09-12 21:26
| 工程
![]() 千葉で一人暮らしをしている・・・私(エツコ)の実家の母。 もともと太っていたことや、骨がもろくなっていたこともあって・・・膝腰がかなり痛むそうで。 84歳になって、趣味の絵手紙教室に通うのがどうにも難しくなってしまったそう。 実家は昔・・・亡くなった父が、夜勤明けに母に何の相談もなく勝手に買ってしまったという、いわく付き でして(笑)。通りから細い私道を200mほど入った、タクシーの入ってきてくれない箇所。 歩みの遅い母が、タクシーを頼んでから通りに出たころにはタクシーがいなくなってるということが重なり。 すっかり出かけることも億劫になっているのが・・・家族としては心配で。 近く(といっても車で40分ほど)に暮らす兄が勧めたのは、ペダル式の車椅子だったのですが。 その試乗車が来るというので、先週の土日で私ひとりで久し振りに実家に・・・。 リハビリにもなると兄は考えてくれたみたいだけど、あの膝はもう良くはならないからなぁ・・・。 シニアカーのほうが『足』にはなると思うんだけどなぁ。自転車にも乗れない母だから、危険だと思った んだろうなぁ。。。とか。イロイロ考えながら高速バスに乗り込みまして。 東京駅の大丸で。 母、みつるちゃん(そういえば高校生のころから私は母をそう呼んでおります。)は大のあんこ好き。 戦時中あんこが食べられなかった反動で、戦後和菓子を食べすぎてしまったのが肥満の原因かも。 『あんも』が有名な、叶匠壽庵の看板を見つけ・・・。『あんも』をお土産にしようと立ち寄ったハズが・・・。 あら、最中!今まで気づかなかったなぁ・・・。 しかもかなーりオーソドックスなスタイル。 『大石最中』、なんで?と思ったら、本店のある、滋賀県大津市の大石龍門という地名のようだし。 『あんも』のあんこは絶品なので、直球であることに間違いないわ~!と。気がついたら最中と、豆大福 を母と兄夫婦に買っておりました(笑)。自分も一緒に食べる大前提ですね。。。 皮(種)がまず美味しいです。近江米を使用とのことですが、さっくりとしっかりと。 そして・・・あの、大納言がふっくらとしっとりとした、やはり直球も直球の美味しい最中でした。 兄夫婦と実家で合流しましたら、あら!?車椅子が無い。 「あーたたちが来てくれる前に、届いたんだけどね。家の前で5mほどは進んだんだけど・・・。回転を して戻ろうとしたらビクとも動かなくなって・・・。ものすごく緩やかな上りなんだけどねぇ・・・。それで 営業の人が『奥さん、この程度の上りで無理だと通りに出たら帰れなくなりますっ!』って持って帰っちゃ ったの・・・。本体の重さに私の体重で100キロ近くなっちゃうもんね~。」気恥ずかしそうに・・・母。 結局兄と母と私。 シニアカーの方向で進めるコトに・・・。まずは玄関のアプローチをスロープにしてもらって。 母と。 久し振りに深夜まで・・・他愛もないおしゃべりをして。 母は気に入らないことだらけの父の買い物なんだけど、話をしていたらこの家のまんまで死ねたら一番 だと思っているのがわかって。いっそ1階だけでもリフォームして、これからの母の残りの人生を少しでも 快適にしたらイイのにと思っていたのだけど。実は私が思うほど母は、不自由でも不便でもないみたい。 毎週土曜は兄夫婦が来てくれて、病院と買い物に連れて行ってくれるし。 それも父に対してだったり、家に対してだったりへの母なりの愛情なのかもしれないなぁ。。。と。 アタシはアタシ。誰とも一緒じゃないと思うような・・・自分を生み出した母なのに、一般的に言われている ようなお仕着せの(!?)高齢者の幸せっぽい箱を押し付けるところだったかも。 でもシニアカーは、楽しみみたい。 翌日は、母の届かない場所を中心に大掃除をして。 またシニアカーの試乗車が来たら、今度は担当者に持ち帰らせないように(!?)タイミングよく実家 に行かなきゃ!! 今日母からこの『大石最中』の絵手紙が。「とっても美味しかったよ。ありがとう。」 じゃ、次も。 母の好きそうな絶品あんこを持って、一緒に食べなくちゃ(笑)。 私も太りすぎには気を付けないと、みつるちゃんに代わって(!?)一生和菓子屋さん歩きを楽しむ為に 控えなきゃなぁ・・・と思いつつ。なぜか手には兄嫁さんに頂いたオランダ家の『落花生最中』が・・・。 ▲
by senshoku-iwasaki
| 2016-09-10 22:51
| 最中
![]() 『乳灰色の無地じゃない無地』は、私(エツコ)にとって特別な色。 伊と忠さんが銀座にショップがあったときに、この乳灰色をテーマに展覧会をさせていただいて。 あのときは、九寸の帯地で緯吉野や吉野格子で凹凸感を出しましたが。 今回は杉綾織で。 今年夏、愛媛県の大三島・大山祇神社の宝物館で・・・緊張感ある美しい鎧兜たちを見て。 あぁこれは。一流の武将たちの、覚悟を決めた一流の勝負服であり、死装束でもあるのかと。 私にとっての着物は、仕事着であり、勝負服であり。。。 だから基本的には汚れの付きにくい(!?)濃い色目のものばかりだったりしますが。 タテ糸のシルバーグレーと、ヨコ糸のアイボリーで織りなす特別な乳灰色で、腹を決めた特別な 着尺を織っております。 20歳くらいのときだったかなぁ・・・。 チョット敷居の高そうな古美術店のショーウインドウに、小ぶりの御所人形が置かれていて。 それまで古いお人形とか・・・全くキョーミ無かったのだけど、ものすごく惹かれて。 珠のような肌と、まんまるで無垢で、健やかなのに高貴な感じのするその赤ちゃんに、 『江戸期 大木平蔵』とキャプションが。 学生ごときがそんなお店に入れるワケもなく、外から眺めつつ・・・。いつか子供を持ったときに、 こんなお人形を買えたらイイなぁ。。。と思ったコトがありました。 そのときに大木平蔵という名称と、艶のある乳灰色の色の美しさがアタマの隅に残りまして。 それから干支が一周したころに・・・息子が誕生したものの。 クニヒサと両輪で、必死に漕がないと生活が出来ない自転車操業のiwasakiだもの。 子供が出来て余裕など全く無くなりまして(笑)。 しかもよく考えたら、クニヒサの実家は玩具問屋でしたので。 クニヒサ誕生のときに、お爺ちゃんが揃えてくれた・・・鎧兜に、鍾馗様、金太郎に桃太郎・・・。 ガラスケース入りの五月人形がどっさりありまして。あぁぁ。御所人形じゃないわねぇ・・・。と。 じゃ、せめて。 人形師なら大木平蔵、龍村織物といえば龍村平蔵、鬼平は長谷川平蔵、竹中平蔵さんもいらっしゃる。 一瞬、息子の名前にあやかりたいとよぎったものの。あぁぁ。母親はアタシじゃ・・・違うわねぇ・・・と。 iwasaki家では取り入れることの出来なかった・・・大木平蔵の御所人形でしたが。 染織iwasakiとして、陰影礼賛な乳灰色の織物として取り入れることができそうです。 只今1丈6尺。ちょうど山の中腹です。 息を止めて、緊張感を保ちつつ・・・折り返したいと思います! ▲
by senshoku-iwasaki
| 2016-09-05 20:41
| 着尺・帯
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